設計事務所 業務改善Navi
概算・コスト

改修工事の概算準備|既存資料と現地確認を揃える

· 編集:KMC株式会社

改修工事の概算前に、既存図、改修履歴、現況、設備、使用継続条件を整理する手順を解説。調査不足を別途条件へ分ける表を掲載します。

改修概算は既存図だけで始めない

改修では、既存図と現況が一致するとは限りません。増改築、設備更新、間仕切変更、用途変更が図面へ反映されていない場合があります。仕上の下や天井内など、現地で見えない範囲もあります。

概算準備では、分かっている既存条件、現地で確認した事実、調査しないと分からない条件を分けます。本記事は調査結果や法適合を保証せず、個別の改修設計と専門調査は担当者が確認します。

最初に集める資料

資料確認内容不足時の扱い
竣工図・確認図書用途、面積、構造、設備現況との照合を計画
改修履歴変更年、範囲、施工図不明部分を記録
点検・修繕記録劣化、漏水、故障追加調査候補
設備資料機器、容量、更新年現地銘板等を確認
現況写真室、天井、外部、設備撮影位置を図面へ記録
運用資料稼働時間、休業可否、搬入仮設・段階施工へ反映

古い図面を捨てず、受領日と作成年を記録します。最新版が判断できない場合は、複数資料の差を一覧にします。

現地確認表

確認場所見ること記録方法概算への影響
対象室寸法、仕上、建具、使用状況写真・平面へ番号撤去・新設範囲
天井・床下点検口、配管、下地見える範囲を明記追加調査
設備機器、盤、系統、空き銘板・図面照合更新・流用
外部搬入、足場、近隣、高低差動線図仮設条件
共用部使用制限、養生、作業時間管理者確認段階施工

見えなかった箇所を「問題なし」と記録しません。「天井内は点検口から確認できる範囲のみ」のように限界を書きます。

記入例

3階事務室の内装・設備改修。竣工図は2008年版、2018年の間仕切変更図あり。現地では一部の壁位置が変更図と不一致。営業を継続しながら2期に分ける希望。夜間作業の可否、共用部養生、既存空調容量、天井内配管、石綿含有建材調査の要否は確認中。現時点の概算は見える範囲と受領図面を前提にし、調査結果後に更新する。

概算の対象と保留が分かり、調査後の変更を前提にできます。実在案件の実績値ではなく、記録形式の例です。

改修範囲を4区分にする

  1. 残すもの:現況利用する範囲と確認条件。
  2. 撤去するもの:仕上、下地、機器、配管、廃棄の範囲。
  3. 新設するもの:仕様、性能、取合い。
  4. 調査後に決めるもの:隠蔽部、劣化、含有物、容量など。

撤去と新設を別にします。撤去した後の補修、既存との取合い、仮復旧、移設も確認します。国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書は国の一般的な事務庁舎等を想定した公共工事向けですが、石綿含有建材の調査、施工調査、仮設、撤去、各部改修という確認区分の参考になります。民間改修の仕様へそのまま適用しません。

概算準備の手順

  1. 既存資料を年代順に並べ、最新版候補を決める。
  2. 改修対象と運用制約を図面へ着色する。
  3. 現地で図面との差、設備、搬入、共用部を確認する。
  4. 残す・撤去・新設・調査後決定へ分ける。
  5. 専門調査と関係者確認の担当・期限を決める。
  6. 概算の前提、除外、更新条件を記載する。

判断分岐:概算へ進めるか

  • 図面と現況が概ね一致するなら、確認済み範囲で数量整理へ進む。
  • 不一致が主要範囲にあるなら、現況図作成を先行する。
  • 隠蔽部が金額を左右するなら、調査方法と仮定を協議する。
  • 営業継続が必要なら、段階施工、仮設、作業時間を別条件にする。
  • 既存設備を流用するなら、容量・状態・接続を専門者が確認する。
  • 有害物質等の調査が必要なら、法令と専門機関の案内を確認する。

AIで既存図を読む場合

AIやOCRで古い図面の室名・寸法を抽出しても、かすれ、手書き追記、縮尺、現況差を人が確認します。紙図面の電子化と設計事務所のAI情報管理を参照し、原本の保管と機密情報の扱いを決めます。

概算へ付ける確認欄

  • 使用した既存図と作成年
  • 現地確認日と確認できた範囲
  • 既存利用、撤去、新設の区分
  • 隠蔽部・劣化・含有物の調査状態
  • 営業継続、騒音、搬入、養生の条件
  • 設備容量と既存系統の確認状態
  • 調査後に更新する項目

開けてみないと分からない部分の扱い

改修では、天井内、床下、壁内、機器内部など、通常の現地確認だけでは見えない部分があります。見えないことを理由に一式へまとめず、確認できた範囲、確認できなかった範囲、追加で可能な調査、工事中に判明した場合の対応を記録します。

対象現時点の確認追加調査の例概算条件への記載
天井内点検口から一部目視点検口追加、部分開口未確認範囲と仮定を示す
床下図面のみ床下点検、部分撤去配管経路を未確定とする
既存仕上げ下表面のみ試験、部分撤去下地補修の扱いを分ける
既存機器銘板と外観点検記録、専門調査再利用可否を保留する

部分開口や試験には、建物所有者の承認、復旧範囲、営業への影響、安全管理が必要です。調査を行うかは、結果によって案や概算がどの程度変わるかを踏まえて決めます。調査しない場合は、特定の状態を保証する書き方を避けます。

営業継続条件を工事項目へ変換する

「営業しながら工事」という条件は、夜間作業と書くだけでは足りません。使用を続ける区画、立入可能時間、騒音や振動を避ける時間帯、停電・断水の許容時間、仮設出入口、資材搬入、粉じん対策、利用者への周知方法を確認します。

たとえば診療や窓口業務を継続する案件では、仮設間仕切り、養生、工程分割、設備の仮切替、清掃、検査の回数が増えることがあります。一方、休館期間を設けられるなら不要になる項目もあります。営業条件を「工事制約」表へ落とし、概算の仮設、撤去、復旧、時間外作業、段階引渡しの各項目と対応付けます。

工期や工事費への影響は施工条件と見積によって異なるため、固定の割増率を置きません。条件変更時は、施工者や専門担当へ再確認する対象として履歴に残します。

既存利用・撤去・更新の判定を残す

既存部位は「残す、撤去する」の二択ではありません。そのまま利用、補修して利用、移設して利用、一部更新、全更新、確認保留に分けると、調査と概算の対応を追いやすくなります。判定には、現況、要求性能、耐用状況、保守記録、他工事との取合いを記載します。

たとえば照明器具を再利用する場合も、器具本体だけでなく配置、制御、配線、天井改修との取合いを確認します。空調機を残す場合は、能力、運転区分、冷媒配管、ドレン、電源、点検空間が新しい使い方に合うかを専門担当が検討します。外観写真だけで再利用可能と確定しません。

判定が変わったときは、撤去費、新設費、仮設、搬出、処分、復旧、試運転のうち影響する項目を確認します。概算表には判定日と根拠資料を付け、調査前の仮定と調査後の判断を上書きで消さないようにします。

よくある質問

竣工図があれば現況図は不要ですか

改修履歴と現況を照合します。不一致がある場合は、必要範囲の現況図を作るか協議します。

写真だけで概算できますか

見える範囲の参考にはなりますが、寸法、隠蔽部、設備系統、取合いを確定できません。前提と不足を示します。

営業しながら工事する条件はいつ聞きますか

初期相談で確認します。段階施工、仮設、養生、作業時間が概算と工程へ影響します。

既存設備を残せば費用は下がりますか

状態、容量、寿命、接続、保証を確認します。未確認のまま流用可と断定しません。

AIで図面と現況の差を自動判定できますか

候補抽出はできますが、現地確認や専門判断を代替しません。確認できない箇所を残します。

参考資料

関連記事

この業務でAIを試すには

業務の条件と確認方法を整えたら、関連するAI活用の手順を確認できます。

概算条件の比較にAIを使う|前提を揃える手順 →

あわせて読みたいガイド

概算・コスト

AI積算と概算見積の違い

AI積算と概算見積の違いを、入力資料、判断する時点、出力の使い方から整理します。設計事務所が初回相談で誤解を避け、次の設計検討へつなげる説明方法も解説します。

約7分で読めます読む
概算・コスト

外構を含む概算|敷地条件と別途項目の整理

外構概算の前に確認する舗装、排水、造成、擁壁、植栽、接道、既存物を整理。建物本体との境界と未確認条件の伝え方を解説します。

約7分で読めます読む
概算・コスト

概算見積の比較表|同じ条件で差を読み取る

複数の概算見積を、工事範囲、仕様、数量、時点、除外項目でそろえて比較する方法を解説。金額差の理由を確認する表と手順を掲載します。

約8分で読めます読む