設計データの受け渡し|形式・版・利用目的を確認
· 編集:KMC株式会社
設計データを渡す前後に、利用目的、形式、版、座標、参照ファイル、確認結果をそろえる受け渡し手順を解説します。
受け渡しはファイル送信で終わらない
同じ拡張子でも、ソフトの版、書き出し設定、フォント、外部参照、座標、属性により結果は変わります。受け渡しの完成条件は、送信できたことではなく、受領者が目的どおりに開き、必要な情報を確認し、版を識別できることです。
PDF、CAD、BIM、表計算は役割が異なります。見た目を固定した発行PDF、編集や再利用に使う元データ、モデル連携に使う交換形式を必要に応じて組み合わせます。一つの形式にすべての役割を負わせません。
最初に利用目的を確認する
「CADデータをください」だけでは、必要範囲を決められません。下記の質問を受領者と確認します。
| 質問 | 回答例 | 受渡しへ反映すること |
|---|---|---|
| 何に使うか | 設備計画の下図 | 必要階と基準点を限定 |
| 編集するか | 設備図を重ねる | 編集形式とレイヤー説明 |
| 見た目を照合するか | 発行図と比較する | 同版のPDFを添付 |
| いつの状態が必要か | 基本設計承認時 | 版、日付、承認状態を明記 |
| どの環境で開くか | 製品名と版が指定 | 互換性を実機で試験 |
用途が閲覧だけならPDFで足りる場合があります。再利用が必要でも、建物全体、非公開部分、作業メモまで渡す必要があるとは限りません。目的に必要な最小範囲を案件責任者が判断します。
受渡し票をファイルと一緒に作る
| 項目 | 記録内容 |
|---|---|
| 受渡しID | 案件内で一意の番号 |
| 送受信者 | 会社、担当、連絡先 |
| 利用目的 | 閲覧、下図、編集、モデル統合等 |
| 対象 | 階、図種、モデル範囲 |
| 版 | 改訂番号、基準日、承認状態 |
| 形式 | 拡張子、作成ソフトと版、交換設定 |
| 基準 | 単位、座標、原点、方位、高さ |
| 構成 | 外部参照、画像、フォント、リンク |
| 制限 | 再配布、編集、利用期限等の合意事項 |
| 確認 | 受領日、開封、欠落、質問、回答 |
制限事項は一方的にファイルへ書くだけでなく、契約や案件の合意と整合させます。法的条件をこのテンプレートだけで決めず、必要なら責任者や専門家へ確認します。
送る前にパッケージを検査する
- 受渡し対象を作業領域から別の発行領域へ複製します。
- ファイル名、版、日付を受渡し票と合わせます。
- 不要な他案件、作業メモ、個人情報を除外します。
- 外部参照、画像、フォント、リンクモデルを一覧化します。
- 交換形式を書き出し、元データを上書きせず保存します。
- 別端末の空の検証フォルダで一式を開きます。
- 同版PDFと比較し、位置、文字、線、属性を確認します。
- 送付経路、権限、期限を設定し、送付記録を残します。
作成者の端末では参照先がキャッシュされ、欠落に気付かないことがあります。検証端末では共有ドライブの作業パスを使わず、受渡しパッケージだけで開きます。
CADとBIMで確認点を変える
CADでは単位、縮尺、座標、レイヤー、線種、文字、外部参照、印刷設定を確認します。BIMでは加えて、モデル用途、対象範囲、属性、リンク、基準点、書き出し設定、未モデル化部分を確認します。
国土交通省の建築BIMガイドライン第3版は、BIMデータの受渡しで、業務区分、情報、責任、共通データ環境などを整理しています。この記事の受渡し票は、その考え方を日常の小規模な受渡しへ簡略化した独自例です。案件契約や発注者要件がある場合はそちらを優先します。
IFCのような交換形式は、異なる環境での情報連携に使われます。buildingSMARTはIFCをオープンな国際標準として説明していますが、標準形式だから必要情報が自動的にすべて移るとは限りません。対象要素と属性を決め、送受信の両環境で検査します。
受領側は原本と作業コピーを分ける
受け取ったファイルへすぐ修正を始めず、受領原本を保存します。ウイルス検査など事務所の受領手順を通し、受渡し票、ファイル数、容量、版を照合します。不足や破損があれば、推測で補わず送信者へ質問します。
作業コピーには受領IDを付け、変換内容を記録します。座標移動、単位変更、レイヤー統合、モデル要素の置換を行った場合は、元との違いを残します。後で再受領したときに、送信者の変更と自社変換を混同しないためです。
受渡し確認の具体例
受渡しID:TR-026
目的:構造担当が基本設計モデルを参照し、検討用モデルを重ねる
基準:単位ミリ、基準点と真北は添付図に表示
内容:元形式一式、指定交換形式、同版PDF、受渡し票
送信前確認:別端末で開封、リンク二件、階名、柱位置を照合
受領回答:モデルは開いたが階名一件が文字化け、PDFで正名を確認
処置:交換設定を修正して再送し、旧リンクを停止
再送では同じファイル名だけを上書きせず、受渡しIDか改訂番号を進めます。受領者が旧版を保持している可能性があるため、差替え対象と使用停止の版を明記します。
失敗時は送信を繰り返す前に原因を分ける
開けない場合は、破損、形式、製品版、権限、ダウンロード未完了を切り分けます。位置がずれる場合は単位、基準点、座標系、書き出し範囲を確認します。見た目が違う場合はフォント、線種、表示設定、未添付参照を確認します。
原因不明のまま形式を変えて何度も送ると、どの版を使うべきか分からなくなります。一件ずつ仮説、変更した設定、結果を受渡し記録へ追加し、確認済みの版を明確にします。
移行試験の合格条件
新しい受渡し方式を全協力者へ展開する前に、一社、一図面、一モデルで試します。受領者が手順だけで取得でき、指定環境で開き、必要な要素を見つけ、質問と回答を同じ受渡しIDへ戻せることを確認します。旧方式の共有リンクは、移行完了を双方で確認してから停止します。
受領確認が期限までに届かない場合は、送信完了を受渡し完了に変えません。連絡先、取得履歴、権限期限を確認し、相手が不在なら代理確認者を決めます。期限切れリンクを無条件に延長せず、対象と送付先を再確認します。
受領後に設計が更新された場合は、差分の影響を判断して再送要否を決めます。関係のない更新まで毎回全量送信せず、変更図、変更理由、置き換える受渡しIDを示します。
よくある質問
PDFとCADデータは両方必要ですか
利用目的によります。編集データの見た目と版を照合する必要があれば、同じ時点のPDFを併送します。
最新版と書けば版番号は不要ですか
受領時点で「最新」の意味が変わります。改訂番号、日付、承認状態を記載します。
交換形式ならソフトの版確認は不要ですか
書き出しと読み込みの実装差があるため、両側の環境と設定を実データで確認します。
大容量ファイルは圧縮して送ればよいですか
容量だけでなく、参照構成、分割、取得経路、権限、展開後の検査を決めます。
AIで受渡し票を作れますか
下書きには使えますが、版、座標、属性、相手先条件は元資料と担当者が確認します。CAD業務とAIも参照してください。
出典・参考資料
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