設計事務所の業務改善指標|測る項目と見直し方
· 編集:KMC株式会社
設計事務所の業務改善で、目的に合う指標を少数選び、定義、記録時点、読み方、停止条件まで決める方法を解説します。
業務改善を始めると、削減時間、案件数、売上、残業、修正回数など多くの数字を集めたくなります。しかし、目的と定義が違う数字を一つの表に並べても、次の行動は決まりません。記録のための入力が増え、現場が測定をやめることもあります。
設計事務所の改善指標は、成績表ではなく、仕事の詰まりや変化を見つける道具です。改善したい場面を一つ選び、結果、途中経過、負担の三種類を組み合わせます。
最初に改善目的を行動で書く
「生産性向上」だけでは、何を変えるか判断できません。「施主打合せ後の決定事項を翌営業日までに担当者へ渡す」「提出前レビューで前提変更を見つける」のように、対象、望む状態、時点を書きます。
目的を決めたら、悪化させたくないものも置きます。たとえば議事録作成時間を短くしても、確認漏れや訂正が増えれば改善とは言えません。速度と品質を対にします。
三種類の指標を一つずつ選ぶ
| 種類 | 見ること | 例 |
|---|---|---|
| 結果指標 | 最終的に変えたい状態 | 提出遅延件数、再提出件数 |
| 過程指標 | 結果へ至る途中の動き | 期限前レビュー実施率、未決事項数 |
| 負担指標 | 改善運用そのものの重さ | 入力時間、確認待ち時間 |
結果だけでは問題に気づくのが遅く、過程だけでは成果につながったか分かりません。負担を見ないと、入力作業を別の残業として増やします。最初は合計三から五項目に絞ります。
指標定義書を作る
同じ「遅延」でも、社内締切を過ぎた時点か、対外提出を過ぎた時点かで値が変わります。指標ごとに次を記載します。
- 指標名と改善目的
- 対象となる案件・工程・成果物
- 数え方と単位
- 開始・終了とみなす時点
- 記録者と記録場所
- 集計頻度と確認者
- 除外条件と欠損時の扱い
- 値を見て行う判断
- 定義の版と適用日
単位を「件」「時間」「営業日」「案件あたり」まで書きます。分母が変わる割合は、割合だけでなく分子と分母も残します。
指標定義の記入例
指標名:レビュー確認待ち時間。目的:提出前の確認停滞を減らす。対象:基本設計と実施設計の社内レビュー。開始:作成者が対象版、確認項目、期限をそろえて確認依頼へ変更した日時。終了:確認者が確認結果を記録した日時。単位:営業時間。記録元:指摘台帳の状態履歴。除外:依頼後に前提変更で取り下げたもの。集計:月次で中央値と長期滞留件数を確認。判断:滞留案件の役割、依頼状態、節目競合を調べる。定義版K-03、10月1日適用。
平均だけでは一部の長期滞留に引っ張られるため、案件数、中央値、一定期間を超えた件数など目的に合う見方を選びます。一定期間の値は自社の工程に合わせて決めます。
現在値は短期間で測る
改善前の基準値がなければ、変化を比較できません。ただし過去資料を何年分も遡って集計する必要はありません。まず直近の数案件や数週間で、定義どおりに記録できるかを確かめます。
過去データの定義が違う場合は、無理に同じ系列へ混ぜません。「旧定義」「試行期間」「正式運用」を区別します。欠損値をゼロとして扱うと、実績がないのか未記録なのか分からなくなります。
改善策と確認日を結び付ける
指標を眺めるだけでなく、変更内容、対象、開始日、期待する変化、確認日を記録します。一度に複数のツールや手順を変えると、どの変更が影響したか判断しにくくなります。
| 記録欄 | 例 |
|---|---|
| 困りごと | 確認依頼が口頭で埋もれる |
| 変更 | 対象版と期限を必須にした依頼欄を追加 |
| 対象 | 実施設計中の2案件 |
| 開始日 | 10月15日 |
| 見る指標 | 確認待ち時間、差し戻し件数、入力時間 |
| 確認日 | 11月15日 |
| 継続判断 | 効果、負担、副作用を担当者と確認 |
設計事務所の業務フローで変える工程を特定すると、全社の数字ではなく対象場面に近い指標を選べます。
数字が悪化したときの読み方
数値が悪化しても、すぐ担当者の努力不足と判断しません。案件数、難度、工程段階、前提変更、記録方法の変更を確認します。記録が定着した結果、以前は見えていなかった問題が表れた可能性もあります。
次の順で読みます。
- 定義と記録方法が変わっていないか
- 欠損や重複がないか
- 対象案件の構成が違わないか
- 個別案件で何が起きたか
- 改善策と関係する変化か
- 継続、修正、停止のどれにするか
少数案件の割合だけで全社方針を変えず、元記録へ戻って背景を確認します。
時間指標を扱う注意
工数や確認待ちを測るときは、労働時間の管理と業務改善の分析を混同しません。労働時間の把握は法令や就業規則に関わるため、厚生労働省の最新情報や専門家へ確認します。改善用データで実際の労働時間記録を置き換えません。
設計事務所の工数管理と結び付ける場合、個人の優劣ではなく、工程別の偏り、確認待ち、前提変更による手戻りを見ます。入力を細かくしすぎず、目的に必要な粒度を選びます。
AIや自動化を測る場合
AI導入では「使った回数」を成果としない方がよいでしょう。対象作業の所要時間、訂正件数、人の確認時間、情報入力の可否判断、利用停止が必要だった事例を組み合わせます。設計事務所のDXは何から始める?のように、小さな対象で試します。
自動化前後で作業範囲が変わった場合は比較条件を記載します。AIの下書き時間だけ短くても、確認と修正が増えれば全体負担は減っていません。精度を一つの点数へまとめず、見落としと過剰な候補を分けます。
月次レビューの進め方
月次ではグラフを説明する時間より、次の判断に時間を使います。定義変更の有無、目標と現状、特に外れた案件、現場の負担、次月に変える一つを確認します。
議事録には、数値、読み方、根拠となる案件、決めた変更、担当、期限、次回確認日を残します。「引き続き注視」で終えず、データを追加するのか、手順を変えるのか、指標を止めるのかを選びます。
指標をやめる条件
指標は増やすだけでなく、目的を終えた、行動につながらない、取得負担が大きい、他の指標と重複する場合に停止します。停止日と理由を記録し、過去データの意味が変わらないよう定義書を保存します。
改善後も監視が必要なら、毎週から四半期へ頻度を下げるなど、負担を調整します。入力する人へ利用結果が返らない指標は形骸化しやすいため、判断と変更を共有します。
失敗を防ぐ具体策
| 失敗 | 防止策 |
|---|---|
| 測れる数字をすべて集める | 改善目的ごとに三種類を少数選択 |
| 人によって遅延の意味が違う | 開始、終了、除外を定義 |
| 割合だけで判断する | 分子、分母、案件背景を確認 |
| 悪化を担当者の責任にする | 定義、記録、案件構成から確認 |
| AI利用回数を成果にする | 全体時間、訂正、確認負担を測る |
| 指標が増え続ける | 停止条件と見直し日を置く |
よくある質問
KPIはいくつ設定すればよいですか
固定の正解はありません。最初は一つの改善目的に対し、結果、過程、負担を各一つ程度から試します。
目標値は他社平均に合わせますか
案件構成や定義が違う数字をそのまま使いません。自社の現在値と業務上必要な状態から決め、定義を明示します。
データが欠けた月はゼロにしますか
ゼロと未記録は分けます。欠損理由を記録し、比較可能かを判断します。
個人別の工数を公開しますか
目的、閲覧範囲、評価への利用、労務管理との関係を先に決めます。業務改善では個人比較より工程の詰まりを優先します。
改善効果が見えない場合はどうしますか
定義、期間、対象、実施状況、負担を確認し、改善策の修正、測定継続、停止を判断します。都合のよい指標へ後から差し替えません。
一次資料で確認できること
- デジタル庁「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン 実践ガイドブック」:現状把握、指標、実施、評価、見直しを含む業務改革の進め方を示しています。
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握方法について教えて下さい」:始業・終業時刻の確認・記録と、客観的記録を基礎とする労働時間把握の原則を説明しています。
上記は業務改革、自動化、労働時間を確認する一次資料です。本記事の三種類の指標、定義書、月次レビュー、停止条件は、設計事務所の改善を継続するための実務提案です。
デジタル庁の資料は政府の業務改革・情報システム管理を対象とする参考資料です。設計事務所の業務量表や標準手順は本記事の独自提案であり、同庁の設計業務向け標準や効果保証を意味しません。
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