設計事務所の共有フォルダ|案件別構成例
· 編集:KMC株式会社
設計事務所の共有フォルダを案件別に整える方法を解説します。少人数向けの構成例、正本、外部共有、移行手順、終了時の整理を紹介します。
共有フォルダは保存場所ではなく仕事の状態を示す
案件ごとにフォルダを作っても、担当者が自由に階層を増やすと、図面の正本、受領原本、発行済み資料が混ざります。少人数の設計事務所では、案件開始時に同じ構成を複製し、作業中、確認中、発行済みを見分けられるようにします。フォルダ数を増やすことより、どこを正本とするかを決めることが重要です。
Google Workspaceの公式説明では、共有ドライブ内のファイルは個人ではなくチームに属し、メンバーが離れても残るとされています。国土交通省のBIM標準ワークフロー第3版は、関係者間のBIMデータ共有に向けた共通データ環境の整備を扱っています。以下の階層は、これらの製品やガイドラインが定めるものではなく、事務所向けの独自運用例です。
少人数事務所の構成例
S014_○○計画
00_案件管理
01_受領原本
02_調査・法規
03_設計作業中
意匠
構造
設備
04_社内確認
05_外部協働
06_発行済み
施主
行政・申請
見積・施工
07_議事録・決定
08_完了成果物
番号は順序を固定するための例です。事務所の業務と利用サービスに合わせて変えます。ただし、受領原本、作業中、確認中、発行済みは分けます。
各フォルダの役割
| 場所 | 保存するもの | 禁止すること |
|---|---|---|
| 00_案件管理 | 連絡先、体制、工程、図面台帳、変更台帳 | 顧客送付図の正本を混ぜる |
| 01_受領原本 | 施主・協力者から受け取った原ファイル | 内容を編集して上書き |
| 03_設計作業中 | CAD、BIM、計算途中資料 | 外部へ直接共有 |
| 04_社内確認 | 確認対象の固定版、コメント | 確認後も放置して正本化 |
| 05_外部協働 | 協力者と交換する必要範囲 | 案件全体を無条件で公開 |
| 06_発行済み | 承認後に特定相手へ出した版 | 同じ版の上書き |
| 08_完了成果物 | 契約と方針に基づく最終成果物 | 個人判断で削除 |
受領原本は、受領日と送信者が分かる名前または台帳を付けます。編集が必要なら作業中へコピーし、原本を保ちます。
正本は一か所に決める
同期したPC側とクラウド側を別の正本にしません。利用サービス上の案件ルートを正本とし、ローカル同期は作業手段として扱います。同期エラーや競合コピーが出たら、更新時刻だけで選ばず、作業者、履歴、発行記録を確認します。
ショートカットは便利ですが、同じファイルが複数の場所にあるように見えることがあります。チームへ「ショートカットは参照であり複製ではない」ことを説明し、正本の実在場所を台帳へ記録します。
外部共有は専用領域から行う
構造、設備、CG、積算などの協力者へ案件ルート全体を見せず、必要なフォルダへ必要な権限を付けます。施主への発行と協力者との共同作業も分けます。
| 相手 | 共有範囲 | 基本権限 | 終了条件 |
|---|---|---|---|
| 構造担当 | 意匠発行版、構造協働領域 | 必要箇所の編集 | 業務完了と成果物受領 |
| 施主 | 施主発行済み、確認資料 | 閲覧またはコメント | 案件条件による |
| 見積先 | 見積依頼一式 | 閲覧・ダウンロード | 見積期限後に見直し |
| 社内管理者 | 案件全体 | 管理 | 担当交代時に更新 |
外部共有した日、相手、範囲、権限、終了予定を共有台帳へ記録します。親フォルダの権限を継承する製品では、下位ファイルだけ権限を弱くできない場合があります。実際の管理画面で相手から見える範囲を試します。
テンプレートを配る手順
新規案件の作成者を限定し、承認済みテンプレートから案件番号と名称を付けて作ります。フォルダだけでなく、図面台帳、議事録、決定ログ、変更台帳の空ひな形も置きます。不要なフォルダは削除せず「対象外」と記録するか、案件開始時のチェックで除外します。
テンプレートを変更した場合、進行中案件へ一括適用しません。新規案件から使い、進行中は必要な変更だけ案件責任者が選びます。途中で階層を変えると、共有リンクと参照先が切れる場合があるためです。
既存フォルダから移行する
- 保存場所と外部共有を棚卸しします。
- 重複、命名違反、所有者不明を一覧にします。
- 発行記録から現行版と発行済みを特定します。
- 一案件を新構成へコピーし、リンクと参照を試します。
- 問題がなければ旧場所を読み取り専用にします。
- 外部協力者へ新しい共有先と切替日を通知します。
- 一定期間後に検索、権限、復元を点検します。
移行中は二重更新を防ぐため、切替日時と更新可能な場所を一つにします。不明ファイルを推測で捨てず、隔離フォルダへ置き、判断者と期限を付けます。
案件終了時の整理
契約上の成果物、発行済み図面、台帳、議事録、変更記録、受領原本を確認します。作業途中の一時ファイルを分け、外部共有と不要アカウントを解除します。保存年限は案件条件、法令、保険、社内規程により決め、一律の年数を採用しません。
完了フォルダを圧縮して個人PCへ置くだけでは、組織の記録になりません。組織管理の保存先、検索方法、復元手順、削除判断者を決めます。
運用点検表
| 点検 | 合格の目安 |
|---|---|
| 正本 | 案件台帳から一つの保存先へ到達できる |
| 発行済み | 宛先、版、発行日を確認できる |
| 外部共有 | 相手、範囲、権限、終了予定がある |
| 受領原本 | 編集物と分離され、受領元が分かる |
| 一時置き場 | 整理担当と期限がある |
| 終了案件 | 権限解除と復元確認を記録した |
月次で全ファイルを目視する必要はありません。違反名、個人所有、公開リンク、期限切れ予定、発行済み領域の更新を抽出し、該当案件を確認します。
一案件の移行試験を記録する
試行案件では、単にコピー完了を確認せず、作業者、確認者、外部協力者の三つの立場で操作します。設計担当はCADと参照ファイルを開き、確認者は発行済み版と台帳を照合し、協力者用テストアカウントは指定フォルダだけが見えるかを確かめます。
| 試験 | 中止条件 |
|---|---|
| 参照図と画像を含む図面を開く | リンク切れ、別案件参照、同期競合が出る |
| 発行済みPDFを図面リストから探す | 版または総枚数が一致しない |
| 外部権限を確認する | 社内作業中や契約資料が見える |
| 旧名から新名を探す | 対応表で到達できない |
中止条件が一件でも出たら全案件への展開を止めます。旧保存先をすぐ削除せず読み取り専用で保持し、修正後に同じ試験を通してから切替日を決めます。
よくある失敗
「その他」と「一時」フォルダが恒久化すると検索できません。一時置き場には整理担当と期限を付けます。年度だけで案件を分けると長期案件が分断されるため、案件番号を軸にします。顧客名の表記揺れは案件台帳の正式名と略称表で管理します。
よくある質問
フォルダ階層は何段までがよいですか
一律の段数より、チームが迷わず正本へ到達できるかで決めます。深すぎる場合は台帳の属性や検索で補います。
部門別と案件別のどちらがよいですか
案件成果物は案件別を軸にし、全社標準やテンプレートは部門共通へ置く方法が分かりやすいです。重複保存は避けます。
外部協力者ごとにフォルダを作りますか
共有範囲と成果物の流れが違う場合は分けます。社名変更や担当交代に備え、役割名を併用します。
完了案件を別ドライブへ移してよいですか
リンク、権限、検索、保存方針、復元を確認してから行います。移動記録と新しい正本場所を残します。
AIでフォルダ整理を自動化できますか
分類候補は作れますが、正本、発行済み、保存要否を自動決定させません。実行前に一覧をレビューし、AI情報管理も確認します。
出典・参考資料
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