建築提案の文章づくりにAIを使う手順
· 編集:KMC株式会社
建築提案の説明文をAIで下書きする際に、根拠資料、読み手、決めること、未確認条件を指定し、仕様や数値の創作を防いで確認する手順を解説します。
提案文AIは設計内容を決めず、説明の下書きを作る
建築提案の文章は、図面を言葉に置き換えるだけではありません。相談で聞いた目的、案で優先した条件、比較案との違い、未確認事項、次に決めることを読み手の順序に並べる役割があります。AIは見出しや言い換えの候補を作れますが、図面にない仕様、確認していない法適合、根拠のない効果を加えることがあります。
そのため、AIへ「提案書を書いて」と頼むのではなく、確認済みの設計内容を、指定した構成へ変換させます。初回提案資料の構成を決めた後の文章工程として使います。
入力する資料を役割で分ける
文章の根拠は一つの長いファイルへ混ぜず、資料ごとに役割を付けます。AIが参照できる機能があっても、選んだファイルが最新版とは限りません。ファイル名、日付、版、承認状態を先に一覧にします。
| 入力 | 文章に使う内容 | 使わない判断 |
|---|---|---|
| 確認済み要望表 | 計画目的、必須条件、優先順位 | 未確認の希望を確定しない |
| 提案図 | 配置、ゾーニング、面積、動線 | 法適合を図から推定しない |
| 案の比較表 | 各案の違いと交換条件 | 優劣を勝手に決めない |
| 概算資料 | 金額、前提、除外、基準日 | 確定価格と呼ばない |
| 確認事項表 | 追加調査、顧客判断、期限 | 都合の悪い条件を省かない |
図面の画像を汎用AIへ入力する場合、文字や寸法を正確に読める保証はありません。文章の根拠となる数値は、設計者が確認した表として渡します。図の見た目から構造形式、材料、性能を説明させません。
一ページ一判断で構成を作る
先に、各ページで読み手に何を理解し、何を決めてほしいかを一文で書きます。文章量を増やすより、ページの役割を固定すると重複を減らせます。
- 計画の目的を、顧客の言葉に近い表現で確認します。
- 今回の案で優先した条件を示します。
- 図面上の工夫と、その根拠を対応させます。
- 比較案との差を、面積、運用、予算など同じ軸で示します。
- 未確認事項と、今回の提案で決められない範囲を示します。
- 次回までに選ぶこと、調べることを分けます。
提案の冒頭で「最適な案」「課題を完全に解決」と断定すると、検討段階の位置づけが伝わりません。「相談時に優先された来客動線を、現時点の条件で比較した案」のように、根拠と時点を含めます。
プロンプトには変更してはいけない情報を書く
匿名化した条件を使う例は次の通りです。
次の確認済み資料だけを根拠に、案件Sの初回提案用説明文を作成してください。読み手は建築の専門家ではない事業責任者です。構成は「相談目的、案で優先したこと、図面での対応、比較時の注意、未確認事項、次回の判断」です。数値、面積、材料名、法規、効果を追加しないでください。概算は確定価格と表現せず、原文にない「安全」「最適」「保証」を使わないでください。各段落の末尾に根拠資料IDを付けてください。
「分かりやすく」だけでは、AIが説明を簡略化する際に条件を落とします。維持する数値、用語、責任範囲と、使ってはいけない断定を明示します。MicrosoftもWordのAI下書きについて、事実、数字、引用、名称などを利用者が確認するよう案内しています。製品の下書き機能が使えるプランや提供状況は、自社環境で確認します。
原文との差分を四種類に分ける
AIの文章を読みやすさだけで評価せず、入力との差を分類します。
| 差分 | 例 | 対応 |
|---|---|---|
| 追加 | 図面にない素材名を記載 | 削除し、指示を修正 |
| 欠落 | 概算の除外項目が消える | 該当欄を必須化 |
| 強調変更 | 希望を必須条件と表現 | 原発言へ戻す |
| 意味変更 | 検討可能を対応済みと表現 | 設計担当が修正 |
文章の確認は、固有名詞と数字、設計内容、顧客との合意、表現の順で行います。AIに同じ文章を再確認させるだけでは、同じ誤りを見落とす可能性があります。原資料を開き、段落ごとの根拠IDを照合します。
図と文章の役割を重ねない
平面図に寸法と室名があるなら、文章で全てを読み上げる必要はありません。文章には「なぜこの配置を提案したか」「どの要求と対応するか」を書きます。反対に、未確認の設備条件や調査予定は図から読み取れないため、文章と表で明示します。
建築パースAIの画像を使う場合も、描かれた製品や納まりを仕様として説明しません。画像は雰囲気の比較、図面は空間と寸法、文章は判断理由と未確認条件を担います。
読み手別に同じ根拠から書き分ける
経営者向けは事業目的、予算範囲、次の判断を先にします。利用部門向けは動線と運用、管理部門向けは条件と更新時点を先にします。ただし、読み手ごとに別の事実を作りません。同じ根拠表から順序と用語を変え、面積、金額、案名は共通の管理表から引用します。
専門語を言い換える場合は、意味を広げないよう原語を併記します。たとえば「バックヤード」は案件ごとに指す範囲が違います。「スタッフ専用の作業・保管範囲」のように今回の定義を添えます。
送付前の確認表
| 確認 | 質問 | 確認者 |
|---|---|---|
| 相談反映 | 顧客の目的と優先順位が一致するか | 窓口担当 |
| 図面整合 | 案名、室名、面積、動線が図と合うか | 設計担当 |
| 概算整合 | 金額、前提、除外、基準日が合うか | 概算担当 |
| 技術表現 | 法規、構造、設備を断定していないか | 各担当 |
| 次の判断 | 顧客判断と事務所の宿題が分かれているか | 案件責任者 |
| 版管理 | 送付PDFと確認済み原稿が同じ版か | 送信者 |
文章だけを承認してから図面を差し替えると不整合が起きます。PDFへ書き出した最終版で、ページ番号、図、表、本文を通して確認します。
失敗時の直し方
AIが仕様を創作する場合は、自由記述を減らし、根拠表の列を指定して一段落ずつ作ります。表現が大げさになる場合は、禁止語を増やすだけでなく、「原文より確度を上げない」という判定基準を付けます。説明が長い場合は、文字数だけ削らせず、各ページの判断目的に不要な段落を人が選びます。
複数案の説明が同じになる場合は、各案で優先した条件と不利になる条件を先に表へし、その表から文章化します。良い点だけを増やす指示は、比較を広告文へ変えてしまいます。
よくある質問
提案文を一からAIに作らせてもよいですか
先に確認済み要望、図面、比較表、未確認事項を設計者が用意します。AIはその根拠を指定構成へ変換する下書きに使います。
専門用語を全てなくした方がよいですか
正確さに必要な語は残し、今回の意味を短く説明します。曖昧な日常語へ置き換えて意味が変わるなら、原語を併記します。
AIが書いた文章に著者名を付けられますか
顧客へ出す責任は事務所側が持ちます。社内の作成、確認、承認を記録し、AIの出力を未確認のまま担当者名で送らない運用が必要です。
パースから魅力を説明させてもよいですか
印象表現の候補には使えますが、画像に見える材料、寸法、性能を事実として書かせません。根拠は確認済み仕様表へ戻します。
毎回同じプロンプトを使えますか
基本構成は共有できますが、読み手、提案段階、根拠資料、禁止事項は案件ごとに更新します。古い案名や数値が残っていないか確認します。