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設計事務所の採算確認|案件ごとの作業負担を把握

· 編集:KMC株式会社

設計事務所が案件ごとの作業負担を確認する方法を解説。架空の利益率を使わず、契約額、工数、外注、追加対応を実績記録から読みます。

採算確認は利益率ランキングを作ることではない

設計事務所の案件負担を把握するには、契約した業務と、実際に投入した工数、外注、直接経費、追加対応を対応させます。売上額だけを並べても、長期間の調整や無記録の追加作業が多い案件は見えません。反対に、工数が多くても高度な業務を適切に受託している場合は、単純に悪い案件とは言えません。

本記事では、架空の目標利益率や業界平均を示しません。会計・税務上の利益計算でもなく、次の見積、体制、受注判断を改善するための業務管理を扱います。

まず4つの数字と2つの記録をそろえる

項目確認元注意点
契約額契約書、変更契約当初と変更後を分ける
実績工数時間記録追加番号と通常業務を分ける
外注実績発注・検収・請求記録範囲と調整工数も見る
直接経費案件台帳税務科目とは分けた業務記録
成果物提出一覧未完了を完了扱いしない
変更理由変更受付表顧客変更と内部手戻りを分ける

金額へ換算する場合は、自社で定めた人件費・間接費の考え方を使います。国土交通省の実費加算方法は、直接人件費、直接経費、間接経費、特別経費、技術料等経費などで報酬を考える標準を示していますが、個別事務所の採算基準を定めるものではありません。

案件採算メモの記入例

対象:基本設計から実施設計。契約変更1件。工数超過の主因は、用途条件確定前に平面検討を開始し、設備条件回答後に再検討したこと。追加案は変更番号へ分離済み。構造外注費は発注額内。次回は着手条件に設備要求表の承認を追加する。

数値だけでなく、差が生じた出来事と次回の変更点を書きます。「採算が悪い」で終えると、次の案件でも同じ問題が起きます。顧客名や用途を理由に一般化せず、確認可能な条件へ分解します。

確認手順

  1. 当初契約と変更契約から、最終的な業務範囲と契約額を確定する。
  2. 成果物一覧で完了状態を確認する。
  3. 工数を設計段階、成果物、追加番号ごとに集計する。
  4. 外注と直接経費を発注・検収記録へ戻って照合する。
  5. 見積時の想定との差を、原因分類と事実メモで説明する。
  6. 次回の見積、着手条件、役割分担へ反映する。

案件途中では、確定した採算を出そうとせず、残工数と未確定の外注を分けて見込みを更新します。「今まで使った工数」だけでは、残りのレビューや申請対応を落とします。

原因を5分類する

分類確認例改善先
見積漏れ必要な成果物を分解していなかった工数見積テンプレート
条件変更用途・面積・案数が変わった追加業務受付
入力不足原資料や承認者が不明だった初回ヒアリング
内部手戻り版違い、レビュー順序の誤り業務フロー
外部調整外注・行政・関係者との再調整依頼仕様と工程

一つの案件に複数原因がある場合、工数や出来事を変更番号で分けます。感想で割合を付けず、追える範囲だけ記録します。

判断分岐:次の行動を選ぶ

  • 見積漏れが繰り返すなら、成果物から作業を分解する方法へ変える。
  • 顧客変更が多いなら、追加受付と合意前着手の基準を明確にする。
  • 回答待ちで期間が延びるなら、作業工数と待機期間を分けて日程見積を直す。
  • 外注調整が多いなら、発注資料と検収条件を見直す。
  • 特定工程のレビューが膨らむなら、レビュー前チェックと承認者を決める。
  • 予定より少ない場合は、品質確認や未完了がないか確認した上で見積値を校正する。

案件同士を比較するときの条件

契約額だけで順位を付けず、業務範囲、建物用途・規模、担当分野、成果物、追加変更、期間をそろえます。基本設計だけの案件と工事監理まで含む案件は直接比較できません。類似案件でも、既存建物調査や関係者数が違えば負担は変わります。

比較表には「類似点」と「相違点」を置き、差を消して平均化しません。実績が少ない段階で標準値を断定せず、案件ごとの記録を蓄積して見積時の質問へ戻します。

段階別に作業負担を読む

案件全体の合計だけでは、どの時点で負担が増えたか分かりません。設計段階ごとに契約範囲、工数、外注、変更を並べます。

段階主な確認負担増の例次回の見直し先
相談・提案受注前の作業範囲無償提案の追加相談範囲と受注判断
基本設計条件整理と案比較承認者不在で再提案ヒアリングと承認経路
実施設計図書の整合と詳細化外部担当との再調整受渡し仕様とレビュー
申請手続別の資料と照会未想定の追加資料申請範囲と前提
工事監理確認・報告・変更対応設計変更の波及変更受付と記録

基本設計の負担が大きい案件でも、理由が案数なのか条件未確定なのかで対策は異なります。段階名の平均だけを見ず、成果物と出来事へ戻ります。

受注前に戻す確認項目

終了案件の採算レビューは、次の受注判断へ戻して初めて役立ちます。過去に負担が増えた条件を、案件固有の拒否条件ではなく質問へ変えます。

記入例:設備要望の決定者は誰か。既存図と現況の照合は済んでいるか。比較案は何の判断に使うか。テナント・運営部門との調整窓口は誰か。外部担当者の契約主体は誰か。

回答が不足する場合は、受注しないと即断するのではなく、先行調査、仮定条件、段階契約など選択肢を検討します。回答が得られないまま固定額と固定納期を置くことの影響を説明し、社内責任者が判断します。

赤字という言葉を原因分類に置き換える

会議で「赤字案件」とだけ呼ぶと、担当者や顧客への印象で議論が終わります。見積漏れ、追加未合意、内部手戻り、外注変更、期間延長など事実へ置き換えます。会計上の損益と業務管理上の負担を同じ言葉で混同しないためにも、表の定義を明記します。

AI導入案件の採算確認

AIを試す案件では、ツール利用料だけでなく、入力資料の整備、出力確認、修正、社内教育の時間を記録します。導入前後で成果物の範囲と品質確認をそろえなければ比較できません。設計事務所のAI活用ガイドを参照し、適用業務と人の確認を決めます。

採算レビュー表

確認質問
範囲契約と最終成果物は一致したか
見積必要作業と外注を含めたか
変更追加業務を記録・合意したか
工数工程別に実績を追えるか
品質レビュー省略で見かけの工数を減らしていないか
再利用次回の質問・見積へ何を戻すか

よくある質問

採算のよい案件だけ受ければよいですか

案件選定は経営判断です。本表は業務負担の事実をそろえる材料で、顧客価値や事業方針を一つの指標で決めるものではありません。

目標利益率は何%が適切ですか

業界一律の率をこの記事では示しません。自社の費用構造、業務範囲、方針を確認し、会計・税務は専門家へ相談してください。

代表者の作業時間も工数へ入れますか

案件固有の設計、調整、レビューであれば、社内ルールに沿って記録します。無記録にすると負担を過小評価します。

失注案件の提案工数はどこで見ますか

受注後案件と分け、営業・提案活動として記録します。契約案件の採算へ混ぜず、受注判断の資料にします。

案件途中でも確認できますか

できます。実績に加え、残工数、未発注外注、未確定変更を別欄に置き、確定値と見込みを混ぜません。

参考資料

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