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概算・コスト

設計料見積書の作り方|業務範囲と費目を分ける

· 編集:KMC株式会社

設計料見積書を、業務範囲、成果物、追加業務、実費に分けて作る手順を解説。工事費への一律定率に頼らず、説明できる見積書へ整えます。

設計料見積書は金額より先に業務を定義する

設計料見積書で最初に決めるのは、工事費に掛ける割合ではありません。誰が、どの段階で、どの成果物を作り、どこまで確認するかです。設計、工事監理、申請支援、既存建物調査、概算協力などを一つの「設計一式」にまとめると、受託後に業務の境界を説明できなくなります。

国土交通省の業務報酬基準は、令和6年国土交通省告示第8号とガイドラインを公開しています。標準となる実費加算方法は、直接人件費、直接経費、間接経費、特別経費、技術料等経費、消費税相当額を積み上げる考え方です。略算方法も示されていますが、工事費へ一律の率を掛ければよいという基準ではありません。建物用途、規模、業務内容、難易度、追加的な業務を確認し、自社の条件で算定します。

なお、2026年10月時点では、設計・工事監理に係る全ての受託契約の書面契約義務化と、契約時の見積書作成の努力義務化を含む改正建築士法の関係規定が2027年4月1日に施行予定です。現在の契約実務と施行後の扱いを混同せず、最新の法令と所管行政庁の案内を確認してください。

見積前に一枚の業務範囲表を作る

見積書を直接書き始めず、相談記録から業務範囲表を作ります。

区分今回含む業務成果物含まない業務・要確認
基本設計与条件整理、計画案、概算条件整理基本図、面積表、説明資料測量、地盤調査
実施設計意匠、構造、設備の調整契約で定める設計図書詳細な積算業務は別途確認
申請等確認申請用図書の作成支援申請図書一式個別許認可、手数料
工事監理契約で定める確認と報告監理報告、記録施工者の施工管理
追加候補模型、追加パース、テナント調整個別に合意回数と仕様を未確定

「申請一式」では、何の手続かが分かりません。「確認申請図書の作成と提出支援」「開発許可は別途協議」のように、名称と境界を書きます。構造・設備を外部へ委託する場合も、外注先の成果物だけでなく、窓口、調整、レビューを誰が行うかを示します。

費目を6つに分けて根拠を付ける

国土交通省のガイドラインに沿って考える場合でも、数字は各事務所の実態で確認します。

費目見積書へ書く内容社内根拠
直接人件費担当区分、想定人日、単価の考え方過去実績、業務分解
直接経費交通、複写、成果品作成など案件固有の必要量
間接経費事務所運営上必要な経費の配賦自社の算定ルール
特別経費遠隔地出張、特別な依頼など発生条件と精算方法
技術料等経費技術力、創造力等の対価案件条件と社内方針
税等適用する扱い契約時点の確認

見積書に人日を表示するかは契約方針によりますが、社内には必ず業務量の根拠を残します。「基本設計30人日」と置くなら、打合せ、計画、図面、調整、レビューの内訳まで追える状態にします。標準業務人・時間数はそのまま自社の実績ではありません。告示の適用条件と建物類型を確認し、自社実績との差を説明できるようにします。

記入例は条件と成果物を対にする

業務名:小規模事務所新築の基本設計。受領資料は敷地測量図、要望書、既存インフラ資料。成果物は配置図、各階平面図、立面図、断面図、面積表、概算条件表。打合せは対面2回、オンライン2回を想定。構造・設備の詳細設計、確認申請、工事監理、完成予想図の追加作成は本見積に含めず、次段階で範囲を協議する。

この例では、金額を示す前に「何を受け取り、何を返すか」が分かります。回数は上限を隠すためではなく、見積時点の前提です。打合せが増えたら直ちに追加料金と決めるのではなく、変更理由、追加成果物、当初範囲への影響を確認して協議します。

5段階で見積書を組み立てる

  1. 相談記録から目的、建物概要、希望時期、依頼範囲を抜き出す。
  2. 標準的に行う業務と、案件固有の追加業務を分ける。
  3. 成果物ごとに作業を分解し、担当と想定工数を置く。
  4. 直接経費、外注、特別経費、税の扱いを確認する。
  5. 除外、前提、見積の有効条件、変更時の協議方法を添えて社内レビューする。

レビューでは合計額だけを見ません。契約書の業務内容と見積書の業務名が一致しているか、成果物の版と提出形式が明確か、別途費用をゼロ円と誤読させないかを確認します。設計料見積と工事費概算は別資料にし、総事業費で併記する場合も小計を分けます。

見積書と契約書の名称をそろえる

見積書に「設計調整費」、契約書に「基本設計業務」、社内台帳に「企画」と書くと、請求時に同じ仕事か判断できません。正式な業務名を一つ決め、補足が必要なら括弧書きで成果物を示します。見積番号、契約番号、変更番号も相互に参照できるようにします。

提出後に顧客から質問を受けた項目は、見積テンプレートの改善候補です。「この中に構造設計は含まれるか」「申請手数料は別か」と聞かれたなら、次回は範囲表の該当欄を先に分けます。質問件数を架空の効果率に変えず、実際に誤読された表現を直します。

判断分岐:定型見積で足りるか

次の順に判断します。

  1. 過去案件と用途、規模、成果物、体制が同じか。違えば定型の人日を流用しない。
  2. 標準業務以外の調査、申請、模型、積算、説明会対応があるか。あれば追加業務欄へ分ける。
  3. 依頼条件が未確定か。未確定なら仮定と再見積の時点を示す。
  4. 外注の範囲が決まっているか。未定なら確定額のように見せない。
  5. 工期短縮や遠隔地対応があるか。体制と特別経費への影響を個別に確認する。

AIで下書きを作る場合の注意

過去の見積書から業務名を抽出したり、成果物と除外項目の抜けを洗い出したりする用途ではAIを使えます。ただし、顧客名、図面、契約条件を外部サービスへ入力する前に情報管理を確認し、単価や法的義務をAIの回答で決めません。設計事務所のAI情報管理を使い、入力可能な資料と確認者を先に定めます。

よくある質問

設計料は工事費の何%と書けばよいですか

国土交通省の業務報酬基準は、工事費へ一律の率を掛ける相場表ではありません。業務内容と必要な経費を確認し、告示とガイドラインを参照して算定してください。

告示の標準業務人・時間数をそのまま使えますか

建物類型、規模、標準業務の内容、追加業務の有無など適用条件を確認します。自社の体制や案件条件と違う部分を調整せず、そのまま実績値として扱いません。

構造・設備の外注費はどこへ書きますか

費目だけでなく、誰が契約し、誰が調整と検収を行うかを明示します。立替、再委託、顧客の直接契約では責任範囲が異なるため、契約条件と合わせます。

見積後に成果物が増えたらどうしますか

追加依頼の内容、当初範囲との差、必要工数、納期への影響を記録し、着手前に扱いを協議します。口頭依頼のまま進めない運用が重要です。

税や請求時期も見積書に必要ですか

金額の表示条件と支払時期は契約確認に必要です。本記事は税務判断を扱わないため、具体的な税の扱いは契約時点の制度と専門家の助言を確認してください。

参考資料

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