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概算・コスト

設計工数の見積もり|成果物から作業を分解する

· 編集:KMC株式会社

設計工数を成果物から作業へ分解し、担当、レビュー、未確定条件を含めて見積もる手順を解説。過去実績で校正する表と判断分岐を掲載します。

工数は床面積だけで決めない

設計工数は建物規模の影響を受けますが、床面積だけでは決まりません。用途、既存条件、関係者数、成果物、比較案、外部担当との調整、申請、レビュー体制によって必要な作業が変わります。「過去の同規模案件と同じ」と置く前に、成果物と前提の違いを確認します。

国土交通省の業務報酬基準は標準業務人・時間数を使う略算方法も示しますが、適用する建物類型、規模、標準業務、追加的な業務を確認する必要があります。公表値を自社の実績工数や設計料相場としてそのまま使いません。

成果物から5段階で分解する

  1. 契約で求める成果物を列挙する。
  2. 各成果物を作成、調整、レビュー、修正、提出へ分ける。
  3. 意匠、構造、設備、管理など担当を置く。
  4. 依頼者回答や行政照会など待ち時間を分ける。
  5. 未確定条件と追加分岐を明記する。

平面図一式を「作図」だけにすると、要望整理、比較検討、面積照合、構造・設備調整、社内レビュー、顧客修正が抜けます。成果物に現れない調整も、必要な業務として分解します。

工数分解表の記入例

成果物作業担当見積工数前提・分岐
平面2案条件整理、案作成意匠自社値要求室表が確定
面積表算定、図面照合意匠自社値2案分
設備条件図情報受渡し、調整意匠・設備自社値設備担当が決定済み
比較表評価軸整理、説明主任自社値顧客判断項目を確認
提出資料編集、レビュー、出力担当・確認者自社値PDF提出

数字は自社の実績と担当者の判断で入力します。見積時点で分からないものはゼロにせず、「回答後に再見積」「別途協議」と書きます。複数案の比較では、一案目の作業を単純に案数倍せず、共通作業と案別作業を分けます。

過去実績の使い方

過去案件は用途や規模だけで選びません。成果物、関係者、既存図の精度、外注範囲、変更回数が近い案件を候補にします。

比較項目過去案件今回工数への影響
基本図一式あり既存図が不鮮明現況整理を追加
案数2案2案同じ
承認者1部門3部門説明・調整を追加
設備担当社内外部直接契約受渡し確認を追加
申請対象外要否照会中確定後に別見積

過去実績の総工数をコピーするのではなく、相違点に対応する作業を増減します。失敗案件だけでなく、予定内に収まった案件も確認し、何が事前にそろっていたかを見ます。

不確定条件は予備工数へ隠さない

不確定条件を一律の上乗せ率にまとめると、顧客も社内担当も理由を理解できません。次のように分岐として示します。

  • 既存図と現況が一致する場合は通常作業へ進む。一致しない場合は現況調査を協議する。
  • 基本設計で設備条件が確定する場合は予定内。確定しない場合は仮定を明記し、実施設計前に再確認する。
  • 比較案が2案なら見積範囲内。追加案は成果物と日程を再見積する。
  • 行政照会で追加資料が必要になった場合は、資料内容を確認して協議する。

レビュー工数を別行にする

作成者の時間だけを見積もると、主任・管理建築士・各分野の確認が抜けます。レビュー前のセルフチェック、分野間調整、責任者レビュー、修正確認を分けます。レビュー回数を増やすほどよいわけではなく、どの段階で誰が何を確認するかを決めます。

確認段階確認内容完了条件
作成者確認寸法、面積、版、参照資料チェック済み
分野間調整意匠・構造・設備の不整合指摘を反映
責任者レビュー要求、契約範囲、説明性承認記録
提出前確認PDF、注記、個人情報提出版固定

一つの成果物を時間帯まで分解する例

初期提案の平面2案を見積もる場合、図面を描く時間だけを置かず、次の順で考えます。

作業入力出力終了条件
与条件確認要望表、敷地資料確認事項一覧不足条件を質問済み
共通方針検討面積・動線の優先順位比較軸責任者と方針合意
案別検討比較軸、法規・技術条件平面2案面積表と整合
分野調整意匠案、構造・設備条件調整指摘回答を反映
比較資料2案、概算条件比較表差を説明可能
社内レビュー提出一式承認版指摘反映を確認

各行に担当と工数を置きます。与条件が未確定なら、質問作成までを先行業務とし、回答後の案別検討は別の見込みにします。作図ソフトの操作時間だけを工数と見なさず、判断、照合、説明まで含めます。

担当者の熟練度をどう扱うか

経験差を単純な割増率にしません。経験の浅い担当者へ任せる場合、レビュー頻度、相談時間、作業分担を具体的に置きます。経験者が担当しても、難しい用途や初めての外部担当との調整では確認時間が増えます。

工数見積を担当者へのノルマにすると、相談やレビューが記録されなくなります。見積は体制を組むための基準であり、品質確認を省く理由にしません。実績差は担当者名だけで比較せず、入力条件、成果物、変更、レビューの違いを確認します。

見積レビューの質問表

  • 成果物名だけで、作成・調整・確認をまとめていないか。
  • 顧客と外部担当の回答を誰が集約するか。
  • 面積表、概算条件、説明資料の更新を含めたか。
  • 変更案と当初案の工数を分けたか。
  • 社内レビューと指摘反映の時間を含めたか。
  • 提出形式、印刷、データ受渡しの作業を含めたか。
  • 案件固有の調査と通常業務を分けたか。

見積承認者は合計時間だけを削らず、削るなら成果物、案数、確認回数、体制のどれを変えるかを明示します。時間だけ減らして同じ成果物と品質を約束しない運用が重要です。

実績で校正する時期

基本設計の終了時、実施設計の終了時、案件終了時に、見積と実績を比較します。途中で大きな差が出た場合も当初見積を上書きせず、最新見込みを別に作ります。次回へ戻すのは「全体を一律に増やす」ではなく、「設備調整を成果物別に追加」「提出前PDF確認を独立」といった作業分解の修正です。

参考資料に挙げるIPAのページは、ソフトウェア開発分野の見積り手法を説明する資料です。成果物を構成要素へ分けて工数を積み上げる考え方を比較材料として参照しますが、建築設計の標準工数、用途別の歩掛、設計料算定方法を示すものではありません。建築設計では業務報酬基準の適用条件と自社実績を確認します。

判断分岐:見積を確定するか

  • 成果物と入力資料が確定しているなら、作業別工数を積み上げる。
  • 成果物は明確だが資料不足なら、着手条件か先行調査を提示する。
  • 成果物自体が未定なら、利用目的を聞き直して範囲を確定する。
  • 外注先が未定なら、社内調整工数と外注費を仮定として分ける。
  • 短納期なら、総工数だけでなく並行作業とレビュー可能日を確認する。
  • 過去実績がないなら、小さな先行作業で実測し、全体へ無理に外挿しない。

AIを使う場合

AIは成果物一覧から作業候補を出したり、過去案件との相違点を整理したりできます。出力された作業が契約範囲に合うか、専門判断やレビューを落としていないかは人が確認します。ChatGPTの使い方を参考に、参照する原文と推測禁止事項を指定します。

よくある質問

坪数や工事費から工数を出せますか

参考要素にはなりますが、それだけで確定しません。業務範囲、成果物、建物類型、調整条件を確認します。

過去案件は何件あれば使えますか

件数だけでなく比較可能性が重要です。類似条件を確認し、少数で標準値を断定しません。

メールや電話の時間も含めますか

案件固有の調整なら、社内ルールに沿って含めます。無記録にすると調整負担を過小評価します。

予備工数は入れない方がよいですか

理由のない一律上乗せを避け、想定する分岐と発生条件を示します。契約上の扱いも確認します。

見積後に工数が変わったらどうしますか

前提変更、追加業務、見積漏れを分け、変更合意と予実管理へ反映します。当初見積は上書きしません。

参考資料

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