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概算・コスト

設計業務の範囲整理|見積前に確認する成果物

· 編集:KMC株式会社

設計、工事監理、申請支援、追加資料を成果物単位で整理する方法を解説。見積前の確認表と依頼内容別の判断分岐を掲載します。

業務範囲は工程名だけでは決まらない

「基本設計から実施設計まで」「設計監理一式」と書くだけでは、依頼者と設計事務所が同じ範囲を想像しているとは限りません。模型、完成予想図、概算、申請資料、テナント調整、既存図面の復元など、同じ工程名の中でも案件ごとに必要な成果物は変わります。

業務範囲は、行う作業、提出する成果物、確認する相手、実施時期、含まない業務を組み合わせて定義します。見積金額を作る前に範囲を一枚にまとめると、工数と外注の見落としを減らせます。

設計と工事監理を混ぜない

国土交通省の業務報酬基準ガイドラインは、標準業務を設計と工事監理等に分け、標準業務に付随する追加的な業務も整理しています。ここでいう分類を、自社の契約と成果物へ落とし込みます。

工事監理は施工者の施工管理と同じではありません。施工者が工程、品質、安全などを管理する仕事と、建築士が設計図書との照合・確認を行う工事監理を混同しないよう、説明資料でも呼び分けます。現場へ行く回数だけで範囲を決めず、何を確認し、どう報告するかを書きます。

6区分の業務範囲表

区分作業例成果物例境界を確認する質問
与条件整理要望・敷地・予算条件の整理与条件表、課題一覧調査資料は誰が用意するか
基本設計計画比較、関係者調整基本図、面積表、説明資料比較案と打合せ回数は
実施設計詳細化、整合確認契約で定める設計図書構造・設備の担当は
申請等申請図書作成、照会対応対象手続の提出図書手続名、手数料、事前協議は
工事監理等照合、報告、設計意図伝達監理報告、記録確認頻度と報告方法は
追加的な業務模型、追加パース、積算等個別に定める成果物仕様、数量、修正回数は

「必要に応じて対応」という欄は、依頼者から見ると含むように読めます。必要になったときに別途協議するなら、その条件を書きます。「行政協議の結果、追加図書が必要になった場合は、内容と納期を確認して協議」のように、分岐点を明示します。

見積前の聞き取り手順

  1. 依頼の目的を聞く。建築確認、融資説明、社内承認など、使う場面を特定する。
  2. 受領できる原資料を確認する。測量、既存図、地盤、インフラ、要望書の版を記録する。
  3. 必要な成果物を列挙する。図面名だけでなく形式、縮尺、提出媒体、部数を確認する。
  4. 関係者と承認者を確認する。施主、テナント、運営、構造、設備、施工者との調整窓口を決める。
  5. 未確定条件を分ける。仮定で進める項目と、回答まで着手できない項目を区別する。
  6. 除外と追加条件を説明し、見積書と契約書へ同じ名称で反映する。

初回相談の質問順は初回相談から提案までも参考にできます。AIへ議事録や成果物候補を整理させる場合は、設計事務所のAI活用ガイドに沿って適用範囲と確認者を決め、最終的な範囲確認は契約担当者が行います。

記入例:改修相談の範囲を分ける

依頼目的:事務所のレイアウト改修について、社内決裁用の計画と概算条件を作る。受領資料:竣工図PDF、現況写真、席数表。含む業務:現況確認1回、要求整理、平面2案、比較表、概算条件表。含まない業務:設備容量調査、石綿等の専門調査、確認申請要否の確定、実施設計、工事監理。既存図と現況が一致しない場合は、追加調査の内容を協議する。

この書き方なら、平面案を作る前提と、調査が必要になった場合の扱いが見えます。「法規確認を含む」とだけ書かず、どの段階で何を調べ、個別照会が必要ならどうするかを示します。

判断分岐:範囲を確定できるか

  • 原資料がそろい成果物も明確なら、作業分解と工数見積へ進む。
  • 原資料が不足するが仮定で比較できるなら、仮定と利用目的を明記する。
  • 現況との差が大きく成果物に影響するなら、先に調査業務を分ける。
  • 申請の要否が未確定なら、確認行為そのものと申請図書作成を別欄にする。
  • 他社が構造・設備を担当するなら、情報受渡しと統合確認の責任を決める。
  • 顧客が成果物名を指定できないなら、利用目的から必要な形式を提案して合意する。

変更時は範囲表を上書きしない

追加依頼が来たとき、当初の範囲表を直接書き換えると、どこが変わったか分からなくなります。変更番号、依頼日、変更理由、追加・削除する成果物、工数と日程への影響、合意日を記録します。採用しなかった依頼も、見送り理由を残します。

例として「平面2案を3案にする」という依頼でも、単純に一枚増えるとは限りません。比較軸の追加、構造・設備との再調整、概算更新、説明資料の差し替えが伴うかを確認します。作図枚数ではなく、関連作業まで範囲に入れます。

同じ成果物名でも仕様を分ける

「パース1点」「模型一式」「議事録作成」のような成果物名だけでは、見積に必要な作業量を判断できません。パースなら視点、解像度、素材確定の程度、修正回数、利用先を確認します。模型なら縮尺、範囲、素材、運搬、保管を確認します。議事録なら会議参加、録音の扱い、作成期限、確認者を決めます。

成果物確認する仕様見積へ影響する分岐
完成予想図視点、用途、仕上確定度広告利用や高精細出力の有無
面積表用途区分、算定段階申請用か初期比較用か
模型縮尺、範囲、素材外注、運搬、修正可否
概算資料対象範囲、根拠資料工事費内訳まで求めるか

仕様未定なら、仮仕様と確定期限を書きます。顧客が後で選べる選択肢を示す場合も、各選択肢で増減する成果物と工数を説明します。

外部担当との境界を確認する

構造・設備・ランドスケープなどを別事業者が担当する場合、「別途」と書くだけでは統合業務が抜けます。誰が依頼資料を作り、質問を集約し、図面の不整合を確認し、最終版を承認するかを決めます。顧客が直接契約する外部担当でも、設計事務所が調整窓口を担うなら、その作業を範囲へ含めます。

反対に、外部担当の専門判断を意匠設計者が代行するような表現は避けます。成果物の作成責任、取りまとめ責任、承認責任を一つの「調整」にまとめないことが重要です。

送付前チェック表

項目確認内容
目的成果物を誰が何の判断に使うか
作業実施する確認と調整を列挙したか
成果物名称、形式、版、数量が分かるか
役割施主、設計者、外注、施工者の担当が分かるか
除外別途・未確認をゼロ円と誤読させないか
変更追加時の協議方法と記録先があるか
期間回答待ちや審査期間を作業時間と分けたか

よくある質問

設計監理一式という表現は使えますか

見出しとして使う場合も、設計と工事監理の作業・成果物を分けて明細化します。施工管理との違いも説明します。

行政との事前相談は設計業務に含まれますか

契約内容によります。対象制度、相談回数、資料作成、照会後の修正を確認し、曖昧な「申請対応」にまとめません。

概算作成は標準業務ですか

一律に決めず、告示・ガイドラインの業務内容と個別契約を確認します。数量積算や工事費内訳作成まで求める場合は特に範囲を分けます。

打合せ回数を超えたら自動的に追加業務ですか

回数だけで判断せず、追加になった理由と当初範囲への影響を確認します。必要な変更合意を行ってから進めます。

成果物の著作権や利用条件も範囲表に入れますか

利用方法に関わる重要事項です。範囲表だけで完結させず、契約条件として当事者間で確認してください。

参考資料

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